企業で新たにデバイスを導入したり入れ替えたりする場合、すべての端末に対してキッティングを行う必要があります。しかし、一台ずつ手動でキッティングしていては手間がかかり、担当者の大きな負担になりかねません。
そこでおすすめなのが、キッティング作業の自動化です。自動化を活用すれば、担当者の負担を軽減できるほか、人的ミスの防止にもつながります。
この記事では、キッティング作業を自動化する方法を解説したうえで、自動化できるツール9選を紹介しています。自動化に対する理解を深め、自社に適した方法を取り入れましょう。
参考記事:
キッティングとは?作業内容や手法、効率化する方法を解説
キッティングを自動化する方法

キッティングを自動化する主な方法としては、以下のようなものがあります。
- バッチプログラムの活用
- クローニング
- Windows Active Directoryの使用
- Windows Autopilotの使用
- プロビジョニング手法の活用
- ベアメタルビルド手法の活用
方法ごとに難易度や工数が異なるため、自社のリソースやキッティング台数などに応じて、適した手段を選択しましょう。
以下で、それぞれの方法について、詳しく解説します。
バッチプログラムの活用
バッチプログラムとは、一定の期間に集めたデータを一括処理するためのプログラムで、期間を定めて収集した売り上げや販売データを処理する用途などに用いられます。
バッチプログラムを活用してキッティングする際は、PowerShellやコマンドプロンプトをツールとして使用するのが一般的です。
事前にキッティング作業を洗い出し、コマンドプロンプトを用いる際はテキストエディタに実行順に書いて保存しましょう。
人的ミスを起こさずに大量のデータが処理でき、昼夜問わずキッティングが行えるため、スムーズに作業を進められるのがメリットです。
クローニング
クローニングは、事前にコピー元となる環境(マスター)を用意し、その環境をOSイメージとしてデータを作成したあと他のデバイスにコピーする方法です。
まず、元になるPCのディスクイメージや各種設定、アプリ情報を抽出し、マスターイメージを作成します。
その後、マスターイメージとPC別の各種設定情報をUSBメモリなどに格納し、クローニングを行うPCに接続して環境を複製していきます。
マスターと同じ構成のパソコンを複製するだけでセットアップなどが完了するため、台数が多い場合でも効率的にキッティング作業が行えるでしょう。
Windows Active Directoryの使用
Windows Active Directoryは、対象のデバイスを使用しているユーザー情報や、アクセス制御、ユーザー認証を行うシステムです。
ドメイン内のソフトを管理する機能により、各デバイスで利用するソフトを管理者がまとめて設定できるのが特徴です。
これによりデバイスが業務に必要なソフトウェアを自動インストールできるため、1台ずつ設定する必要がありません。
Windows Updateも一括で行えるため、管理者の負担が軽減されるほか、従業員もメンテナンス状況を気にすることなく端末を使い続けられます。
Windows Autopilotの使用
Microsoft公式機能の一つであるWindows Autopilotを使えば、大量のPCに対してWindows10/11OSをクラウドベースで展開することが可能になります。
インターネット接続状況下であれば場所を問わずキッティングが可能な、要件に応じて綿密に構築できる点がメリットです。
ただし、利用にはMicrosoft 365 Business、Microsoft Store for Businessなど、Windows Autopilotと連携するため特定のサービスに加入する必要があります。
プロビジョニング手法の活用
プロビジョニングとは、WindowsADK(Assessment and Deployment Kit)というMicrosoft公式ツールを使いキッティングする方法です。
事前にWindowsADK内のWindows構成デザイナーでPPKGファイル(プロビジョニングファイル)を作成し、対象となるPCに用いることでキッティング作業時間の短縮が可能になります。
PPKGはSDカードやUSBに作成できるため、ネットワークに接続せずとも自動化作業が可能になる点がメリットです。
ただし、利用者の操作を必要とせず、自動でインストールを行うサイレントインストール方式に適合していないアプリをインストールすることはできません。
ベアメタルビルド手法の活用
ベアメタルビルドは、WindowsOSにある「バックアップと復元」にも使用されている自動化方法です。
WindowsOSに必要な環境を自動で構築する方法でもあり、マスターを必要としない点が特徴です。
個別設定を除くWindowsOSインストールや設定、アプリケーションのインストールといった範囲の自動化が可能になります。
この方法は、キッティング作業を短期間で終わらせることが可能で、異なる機種間でも利用できるのがメリットです。
また、使用にはWindowsのボリュームライセンスが必要になるほか、作業が煩雑化しがちな点には注意が必要です。
キッティングを自動化できるツール9選
キッティングを自動化し、情シスの負担を大幅に減らすためには、自動化ツールの導入がおすすめです。
これらのツールは、スクリプトの実行やクラウドベースの管理システムを活用し、キッティング作業を迅速かつ正確に行うことができます。
クローニングのほか、リカバリやデータ消去など、さまざまな機能がツールごとに搭載されているので、自社の要件に合ったツールを導入しましょう。
ここからは、キッティングを自動化できるツール9選を紹介します。
PalletControl
PalletControlは、JALインフォテックが提供する PC資産管理ソフトウェアです。PCの大規模展開に伴うキッティング作業の自動化を実現します。
PCの状態や設定、ライセンス情報などを自動で収集して一元管理できるほか、高度な配布機能を搭載しているのが特徴です。
キッティング作業の結果や展開状況が視覚的に把握でき、配布の実行期間やタイミングなども細かく設定できるため、担当者に大きな負担をかけることがありません。
クライアントPCの状況をリアルタイムで把握できるため、社内ネットワークの安全性やPC環境などを常に調査することが可能です。
Acronis Snap Deploy
Acronis Snap Deployは、シンプルで使い勝手のよいウィザード型UIが特徴です。直感的に操作できるため、ミスを減らし作業時間を短縮することが可能です。
高速配布機能が強みで、1台のマシンにプロビジョニングする工程と同様の時間で数百台にプロビジョニングを行うことができます。
手動でブートせずに稼働中のWindowsPCにデプロイでき、ワンクリックオプションを使用すれば異なるデバイスに配布する場合も元のマシン名を維持できます。
Symantec Ghost Solution Suite
Symantec Ghost Solution Suiteは、複数のPCを一斉にクローニングできるツールです。
5ステップという少ない工程で、複雑な操作をせずに簡単にクローニングが行えるため、ミスや設定漏れを防ぎつつ、作業にかかる担当者の負担を軽減します。
サブスクリプションのほかワンタイムライセンスでの契約もでき、端末の移行のようにピンポイントで使用したい場合にも活用できるでしょう。
SetROBO for Kitting
SetROBO for Kittingは、キッティング作業を自動化するRPAツールで、複数台のPCでも同時にキッティングすることが可能です。
キッティング対象のデバイスにはソフトをインストールする必要がなく、実行形式ファイルを使用するだけで完了するのが大きな特徴です。
PCごとの個別設定も自動で行えるほか、設定値をチェックしながら作業できるので正確にキッティングを実行できます。
キッティングするPCの台数が何台でも料金が変わらないので、大量のデバイスを使用する企業でもランニングコストを抑えられるでしょう。
瞬快
富士通の瞬快は、環境設定を再起動だけで簡単に復元できるソフトウェアで、キッティング作業にも適しています。
配信用サーバを用いてディスクイメージを一斉配信できるので、複数台のキッティングを高速、迅速に実行できます。
設定の変更やソフトのバージョンアップも自動で配信できるほか、更新後に問題が起きた場合もすみやかに更新前の状態に戻すことが可能です。
Actiphy Rapid Deploy -RE
Actiphy Rapid Deploy -REは、USBメディアだけでクローニングができるキッティングツールです。複雑な作業を必要としないためユーザーを選びません。
バックアップの作成もデプロイもワンクリックで行えるほか、シンプルでわかりやすいUIでマニュアルがなくてもスムーズにキッティング作業が実行できるのが特徴です。
M2DeployTools
M2DeployToolsは、Mac端末に特化したキッティングツールです。
Apple正規販売店(VAR)三谷商事のMac向けパッケージングツールで、ディスククローニングのようにイメージを復元し、個別設定も簡単に行えるのが特徴です。
IPアドレスやコンピュータ設定、Active Directory設定などが一括で行えるため、担当者の負担を大きく軽減します。
Apple Remote Desktopに搭載されたインストール機能を活用すれば一括適用できるため、手間がかかっていたMacのキッティング作業を短時間で終えることが可能です。
ImageMaker
ImageMakerは、OSイメージの作成と展開を行うクローニングツールです。Windows 8、8.1、10、11に対応しているので、最新のPCを導入する際のキッティングに活用できます。
機能がシンプルなほか、USBと外付けHDDがあれば作業が行えるため、配信用サーバがなくてもセットアップなどが行えます。
最小限の機能に抑えられているため、100ライセンス5万円という低価格で提供されています。
ただし、イメージ作成はオフラインに対応していないので、必ずインターネット環境で利用しなければなりません。
devTANC
devTANCは、Macではなく、iOSのキッティングに対応している自動化ツールです。管理PCとしてWindowsで一括管理が行えます。
「WindowsPCを使用しているものの、従業員用のデバイスにiPadやiPhoneを導入したい」と考えている企業に最適です。
USB接続で簡単にキッティングが行えるので、専門的な知識や技術がなくても操作に困ることはありません。
デバイスの設定やapp情報もcsv形式で残せるので、デバイス情報を簡単に記録することができます。
キッティング自動化において課題となるポイント
キッティングの自動化は、複数台のデバイスを導入するときや入れ替え時の効率化に役立ちますが、その運用には次のような課題が伴います。
- 専門的な知識やノウハウが求められる
- 機種ごとのマスター作成など手間がかかりがち
一つずつ見ていきましょう。
専門的な知識やノウハウが求められる
バッチプログラムを用いてのキッティングや、クローニングツールの導入など、キッティングを自動化するためには専門的な知識が必要になります。
また、キッティング作業に必要な設備を整えたり、環境を構築したりといった事前準備も欠かせません。
そのため、担当者にキッティングを自動化する専門的な知識がない場合、準備を完了させるまでに多くの時間を要することがあります。
機種ごとのマスター作成など手間がかかりがち
クローニングでマスターを作成する場合、同じハードウェア構成の機種にしか対応できません。
そのため、複数の機種を導入したい場合は機種ごとにマスターを作成する必要があり、その分、事前準備に多くの時間が必要になることが予想されます。
このような作業工程を鑑みて、本当に情報システム部門の負担軽減につながるかどうかの見極めが重要になるでしょう。
情シスにかかる負担が大きい場合は、キッティングを外部に委託するのも一案です。
(まとめ)キッティングをアウトソースして手間やコストを抑えよう

キッティングでの人的ミスや設定漏れを防ぐためには自動化が有効ですが、多くの場合、専門的な知識が必要になります。
社内のリソースで対応できない場合は、自動化ツールを導入する方法もありますが、より手間を削減するのなら専門企業へのアウトソースがおすすめです。
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